病院薬剤師は何をする?仕事(業務)内容をわかりやすく解説!

薬剤師の仕事

薬剤師というと、調剤薬局で処方箋の薬を渡してくれる人、ドラッグストアで薬を売っている人、というイメージが強く、病院薬剤師はあまり知られていないと思います。

ですが実際には表に見えにくいところで幅広く活動しており、病院の運営には欠かせない職種の一つです。

この記事では、病院薬剤師の仕事を紹介します。病院薬剤師の仕事は大きく分けて6つに分類され、調剤、医薬品管理、医薬品情報、病棟業務、チーム医療、外来業務があります。

それぞれの仕事についてわかりやすく説明しますので、薬剤師の仕事に興味のある方は是非最後までご覧ください。

 

調剤業務

病院では、内服薬・外用薬・注射薬など、1000種類を超える医薬品が使用されています。薬剤師は、医師が作成した処方箋に基づき、これらの薬を患者さんに適切に届けるために調剤を行っています。

調剤は「調剤室」という専用の部屋で行われ、患者さん一人ひとりの状態に合わせて薬の形や量を調整します。

たとえば、錠剤を飲むのが難しい患者さんには粉薬に変更し、分包機という機械を使って1回分ずつ均等にパックします。パックされた薬は、薬剤師が異物の混入や分量のばらつきがないかをしっかり確認します。

錠剤についても、取り間違いが起こらないよう、患者さんの名前を印字して1回分ずつパックすることがあります。これも薬剤師が中身に誤りがないか丁寧にチェックします。

注射薬は、患者さんごとにトレーなどでセットされるほか、複数の薬剤を混ぜることもあります。薬の組み合わせによっては白く濁ったり、効果が弱くなることもあるため、慎重な確認が必要です。

また、食事がとれない患者さんには点滴で栄養を補う「静脈栄養」が行われますが、この調整は無菌環境で、特別な設備を使って行われます。

 

薬剤管理指導業務

患者さんが入院する際には、薬剤師が患者さんやご家族に対して、薬のアレルギー歴や現在の服薬状況などを丁寧に確認します。

持参薬(入院前に使っていた薬)についても内容を確認し、その情報を医師や看護師に正確に伝えます。

手術を予定している患者さんの場合には、術前に中止が必要な薬がきちんと止められているかを確認するのも薬剤師の大切な役割です。

また、妊娠中や妊娠を希望する女性に対しては、薬が胎児や授乳に与える影響についてカウンセリングを行うこともあります。

入院中の患者さんには、処方された薬の効果や副作用についてわかりやすく説明し、正しく服用してもらえるよう服薬指導を行います。

薬の効果が不十分だったり、副作用が見られた場合は、医師や看護師と連携して、薬の変更や中止を検討します。

薬剤師は、患者さんが安全かつ効果的な薬物療法を受けられるよう、常に最善を考えて行動しています。

 

医薬品管理

医薬品管理では、薬の在庫や品質を適切に保つことが重要な役割となります。

薬の中には熱や光に弱いものもあるため、それぞれに適した温度や湿度で保管したり、光を遮る工夫をして保管する必要があります。

病院では1,000種類以上の医薬品を取り扱っており、それぞれに異なる注意点があります。そのため、「管理」と一言で言っても、非常に多くの知識と手間が求められる業務です。

また、薬が不足すると治療に支障が出ますし、在庫が多すぎると使用期限が切れてしまうこともあるため、常に適切な量を保つよう調整することも薬剤師の重要な仕事です。

 

医薬品情報

薬には、使い方や適応する病気、効果、副作用、使用できない人、他の薬との飲み合わせなど、非常に多くの情報があります。こうした薬に関する情報を扱うのが「医薬品情報業務」です。

「この薬はどう使うの?」「こういう患者さんにはどの薬がいい?」「この症状、副作用かも?」といった、医師や看護師からの薬に関する質問に対して、医薬品情報を担当する薬剤師が調べて答えます。

また、新しい薬が発売された時や、既存薬の新しい情報が出た時には、その内容を整理して病院全体に周知します。

さらに、副作用が発現した場合には、その情報を取りまとめて国へ報告することも薬剤師の重要な役割です。

 

病棟薬剤師

入院患者さんが過ごす病棟には、薬剤師も配置されています。

病棟薬剤師は、患者さんが使用する薬の確認や、副作用・アレルギー歴などの情報を集め、医師や看護師などの医療スタッフと共有します。また、入院中に使われる薬の管理も病棟薬剤師が担当します。たとえば、新しく追加された薬の飲み合わせの確認、患者さんへの説明、副作用のチェックなどを行います。

入院経験のある方の中には、病棟で薬剤師と話したことがある人もいるかもしれません。

病棟薬剤師は医師の回診に同行することもあり、薬の内容や使用量について医師と話し合いながら、患者さんの治療方針を考えます。また、患者さんのすぐそばにいる看護師と連携し、薬の効果や体調の変化なども細かく確認しています。

 

チーム医療

チーム医療とは、患者さんとそのご家族を中心に、複数の医療専門職が協力して治療やケアを行う医療の形です。

薬剤師もチームの一員として、定期的に行われるカンファレンスや病棟のラウンドに参加し、薬学的な視点から助言や提案を行います。

たとえば「栄養サポートチーム(NST)」というチームがあります。NSTは、食欲がない患者さんや栄養状態の悪い患者さんに対して、栄養管理を行うことで、全身状態の改善や床ずれなどの合併症の予防を目指しています。

このチームには、管理栄養士、看護師、理学療法士などが参加しています。薬剤師は、栄養剤や点滴などに関する薬の専門知識を活かして、患者さんの栄養状態の改善をサポートしています。

 

外来業務

外来患者さんが受け取る薬は、医薬分業の進展により、ほとんどが院外処方となっています。多くの患者さんは、病院で処方箋を受け取った後、調剤薬局へ持参して薬を受け取ります。そのため、院内で外来患者さんに薬を調剤し説明する機会は、現在では少なくなっています。

しかし、特定の治療では院内での調剤が必要になることもあります。たとえば、外来で抗がん剤治療を受ける患者さんの場合がそれに当たります。

こうした患者さんに対しては、薬剤師が直接お話をし、自宅での体調の変化や副作用について確認し、適切なサポートを行います。抗がん剤は免疫力が低下している患者さんに使用されるため、感染予防の観点からも衛生管理が非常に重要です。そのため、専用の無菌室で薬の調製を行っています。

 

その他

他にも、病院薬剤師の仕事は多岐にわたります。ここでは代表的な業務を簡単にご紹介します。

薬学生の指導
薬剤師を目指す薬学生に対して、実習の指導を行います。病院での実際の業務を通して、薬剤師としての知識や技術を丁寧に教えます。

治験のサポート
新しい薬を開発するためには、治験という過程が必要です。薬剤師は、薬の専門家として医師のサポートを行い、治験薬の保管や管理も担当します。

在宅医療
病気や高齢などの理由で通院が難しい患者さんの自宅を訪問し、薬がきちんと使えているか、副作用が出ていないかなどを確認し、安心して治療が続けられるよう支援します。

臨床研究への参加
医療の進歩のために、臨床研究にも関わります。研究結果は学会などで発表され、今後の医療に役立てられます。

 

まとめ

病院薬剤師の仕事は、調剤や服薬指導にとどまらず、注射薬や点滴の調製、病棟での薬剤管理、チーム医療への参加、さらには在宅医療や治験、薬学生の指導など多岐にわたります。医師や看護師と連携し、患者さん一人ひとりに最適な薬物療法を提供することで、治療効果の向上や副作用の予防に貢献しています。薬の専門家としての知識と判断力が求められる分、やりがいも大きく、医療の現場で欠かせない存在です。

 

 

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