薬剤師を目指そうと思ったとき、「どういうルートで資格を取るの?」「大学は何を基準に選べばいいの?」と悩む人も多いでしょう。
薬剤師になるには、薬学部への進学と、その後の国家試験合格が欠かせません。ただし、その過程には知っておくべき重要なポイントがいくつかあります。
この記事では、薬剤師になるまでのステップや大学選びのコツについて、また国家試験の難易度の難易度についても初心者にもわかりやすくご紹介しています。進路を考えている方の参考になれば幸いです。
薬剤師になる方法
薬剤師という職業を目指す道のりについて解説します。このプロセスを知ることで、小中高校生のみなさんが、将来のために今何をすべきか明確になるでしょう。
進路選択で迷うことのないよう、正しい情報を得て、納得のいく決定をしてください。
薬剤師になるまでの流れ
薬剤師として活躍するためには、薬剤師国家試験に合格することが必須の条件となります。
そのためには、6年制の薬学部または薬科大学への進学が不可欠です。
大学に入学後は、幅広い一般教養に加え、薬学に関する専門的な知識を深く学びます。さらに、病院や薬局での実務実習、卒業論文の作成、そして薬剤師国家試験に向けた対策に取り組むことになります。これらの課程を修了し、卒業見込みまたは卒業することで、薬剤師国家試験の受験資格が得られます。
国家試験に合格した後には、薬剤師免許の申請手続きを行います。申請が受理され、薬剤師名簿に登録され、免許証が交付されると、晴れて薬剤師として働くことができるようになります。
必要な科目
大学入学にあたって、特に重要となる科目についてご説明します。
国立大学と私立大学では、試験科目やその範囲に若干の違いが見られます。
多くの国立大学では、英語、数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B、そして理科2科目(化学と生物または物理の組み合わせ)が求められる傾向にあります。
一方、私立大学では、英語、数学Ⅰ・Ⅱ・A・B、そして化学が一般的です。どちらの大学においても共通して重要となるのは、英語、数学、そして化学と言えるでしょう。
特に数学は、小学校からの学習の積み重ねが重要となる科目であり、化学を深く理解する上でも基礎となります。したがって、薬剤師を目指す皆さんにとって、これらの科目は特に力を入れて学習すべき科目と言えるでしょう。
大学の選び方
全国に70校以上存在する薬剤師養成課程のある大学。その中から、将来の自分にとって最適な学び舎を見つけるためのポイントを解説します。
学費という視点:国公立大学と私立大学
薬学部の学費は、大学の種類によって大きく異なります。一般的に、国公立大学の年間授業料は50~60万円程度であるのに対し、私立大学では200万円前後の費用がかかります。6年間の総額で見ると、国公立大学は約300~360万円、私立大学は約1200万円となり、その差は800万円以上にもなります。
経済的な理由から国公立大学を志望する方も多いでしょう。しかし、国公立大学は共通テストをはじめとする受験科目が多く、入学の難易度も高い傾向にあります。どうしても国公立大学に進みたい場合は、早めの準備が不可欠です。
一方、私立大学に進学する際には、奨学金制度を利用する学生も少なくありません。ただし、奨学金には返済義務がある場合がほとんどです。返済額や期間などの条件をしっかりと確認することが重要です。また、私立大学の学費は家計にとって大きな負担となるため、早い段階から保護者とよく相談しておくことをお勧めします。
薬剤師国家試験合格率に注意
薬剤師国家試験の合格率は、大学選びの重要な指標の一つですが、その数字だけを鵜呑みにするのは危険です。
特に私立大学の中には、国家試験の合格率を高く見せるために、最終学年で厳しい卒業試験を実施し、合格見込みのない学生を卒業させずに留年させるケースがあります。これは、合格する可能性の高い学生のみを受験させることで、大学全体の合格率を高めるための対策と言えます。
この結果、見かけ上の合格率は高くても、入学した学生全体から見ると、留年率が非常に高くなっている大学も存在します。さらに、留年だけでなく、最終的に卒業できずに退学してしまう学生も少なくありません。
したがって、薬剤師国家試験合格率を参考にする際は、単なる合格者数や合格率だけでなく、「ストレート合格率」、つまり入学した学生が留年や退学をせずにストレートで国家試験を受験し、合格した割合を確認することが非常に重要です。
一般的に、入学時の偏差値が高い大学ほど、国家試験の合格率も高い傾向にあります。逆に言えば、比較的容易に入学できる大学は、国家試験の合格率が低い可能性があり、留年率も高い傾向にあるため注意が必要です。
総合大学か単科大学か
どのような大学生活を送りたいかによって、総合大学と単科大学のどちらが適しているかは異なります。
多様な学部を持つ総合大学では、サークル活動などを通じて、薬学部以外の学生とも交流を深める機会が多くあります。大規模な大学ならではの活気ある雰囲気の中で、様々な価値観に触れたいという方にはおすすめです。文化祭や部活動なども盛んな場合が多いでしょう。
一方、単科大学は薬学部のみで構成されています。こぢんまりとした環境ではありますが、落ち着いた雰囲気の中で、同じ目標を持つ仲間と深く関わりたい方に向いています。
サークル活動などに参加する場合、総合大学では薬学部の学生は比較的忙しいため、他学部の学生とスケジュールが合わないこともあります。しかし、単科大学であれば、学生のスケジュールが共通しているため、時間を合わせやすいというメリットがあります。
ちなみに、筆者は総合大学の理系の学部のキャンパスに通っていましたが、理系の学部はどこも忙しいため、他学部との都合のずれはそれほど気になりませんでした。
通学距離:実家暮らし vs 一人暮らし
通学距離は、実家から通うか一人暮らしをするかで、費用面と時間面の両方にメリットとデメリットがあります。自身の状況に合わせて最適な選択をしましょう。
実家通学のメリットは以下の通りです。
- 通学定期代のみで済むため、生活費を抑えられる。
- 家事を親に任せられるため、自分の時間を確保しやすい。
- 実験や実習で帰宅が遅くなっても、すぐに勉強に取り掛かれる。
一方、一人暮らしのメリットとしては、
- 大学までの距離が近いため、通学時間を有効活用できる。
- 誰にも邪魔されずに自分の時間を過ごせる。
- 自分のペースで生活できる。
などが挙げられます。特に、自分のペースで生活できることは大きな利点です。しかし、
- 家事の全てを自分で行う必要があるため、時間を取られる。
- 食費や家賃などの生活費がかかる。
といったデメリットも存在します。
実家から通えない距離ではないけれど、通学に片道2時間もかかる場合や、実家に兄弟が多く集中して勉強できる環境がないなど、落ち着いた環境で学習したいと考えるなら、一人暮らしを選択することでストレスを軽減し、勉強に集中できるかもしれません。
また、一人暮らしは友達を招きやすく、人間関係を築きやすいという側面もあります。特に地方から都市部の大学に進学した学生にとっては、都市の利便性や楽しさを体験できる良い機会となるでしょう。
費用のことや、勉強や生活の環境のことなど、総合的に考えて大学を決めることをお勧めします。
薬剤師国家試験:その内容と難易度
薬剤師国家試験は年に1回、2月に2日間に渡って実施されます。
年に1回しかないので、仮に落ちてしまったら1年間を棒に振ります。
試験内容は筆記で、薬学に関する幅広い分野から(化学・生物・物理・薬理・薬剤・衛生・法規・倫理など)出題されます。
これだけの科目があるので、大学生活でしっかりと対応する必要があります。
合格率は70~90%
とはいっても、これは大学の卒業試験で認められた人(大学による)が受けている試験でこのパーセンテージですので、決して簡単な試験ではありません。
仮に合格できないとどうなるか?
就職活動を行い内定をもらうことが社会人の始まりの第一歩ですが、薬剤師国家試験はその就職活動の後になります。すなわち、薬剤師の資格があることが前提で就職の内定が出るんです。国家資格試験に不合格になった場合は、内定が取り消されてしまうということもあります。
まとめ
薬剤師になるには、薬学部(6年制)に進学し、卒業後に薬剤師国家試験に合格することが必要です。大学選びでは、国家試験の合格率や立地や学費など、自分に合った環境を見極めることが大切です。将来どんな薬剤師になりたいかをイメージしながら進路を決めると、学びのモチベーションにもつながると思います。
薬剤師になりたいと考えている、小中高校生のみなさん、またその保護者の方の参考にしていただければ幸いです。
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